「このクオリティでこの価格はコスパ最強!」ーーSNSのインフルエンサーによる服の紹介で、最もよく使われるフレーズです。しかし、中価格帯のドメスティックブランドや量販アパレルを長年買い付けてきたMD(マーチャンダイザー)兼バイヤーとしての私の視点から見れば、その「コスパ」の多くは、最初の数回着用しただけで崩壊する一時的な幻に過ぎません。低価格アパレルがコストを削減するために仕掛けているトリックと、本当に長持ちする服の見分け方を伝授します。
多くの人が服の良し悪しを「生地の肌触り」だけで判断します。しかし、現在のテキスタイル技術は非常に進化しており、ポリエステルなどの化学繊維を大量に混紡することで、店頭に並んでいる瞬間だけは「まるでカシミアやシルクのような滑らかさ」を人工的に作り出すことが可能です。これこそが最初の罠です。こうした服は、2〜3回洗濯機にかけただけで、繊維が毛羽立ち、大量の毛玉(ピリング)が発生して一気に部屋着のような見た目になってしまいます。
プロのバイヤーがショールームで服の耐久性を見極める際、真っ先に見るのは「アームホール(脇の下)の縫製」と「生地の地の目(織り目の方向)」です。
コストを極限まで削った服は、生地のロスを減らすために、本来なら垂直に通すべき織り目を斜めに傾けて裁断(非効率な型入れ)をしています。これで作られた服は、洗濯すると一発で全体の形が歪み、裾や襟元がねじれてしまいます。また、裏側の始末が「オーバーロック(端かがり)」だけで済まされている服は、着用時の摩擦で糸が解けやすい。本当にタフな服は、肌に当たる内側の縫い代が「袋縫い」や「パイピング」で丁寧に保護されています。
値段が安いこと自体は悪ではありません。しかし、1シーズンでゴミ箱行きになる5000円の服を毎年買い替えるよりも、細かい仕立てが美しく、3年着ても型崩れしない2万円の服を選ぶ方が、結果として財布にも環境にも優しい。表面的な「コスパ」という言葉に惑わされず、服の「裏側」に隠された職人や工場の誠実さを見抜くこと。それこそが、失敗しない服選びの第一歩です。